S.L.A.A.は「セックスや恋愛/愛情の依存症者」の相互支援に取り組む自助グループとして、1976年に結成された、いわゆる”S”分野で最も古い12ステップフェローシップです。S.L.A.A.では、メンバーが避けるべき性的行動は、各自で「ボトムライン行動(例えば、不倫などの「多大な損害を与える行動」など)」として定義されます。
S.L.A.A.には「ボトムライン行動がどう決定されるべきか」という一律のガイドラインはなく、その行為の発生または再発の速度、頻度、期間をコントロールできなくなり、その結果が「自分と他人の精神的、心理的、身体的、感情的、道徳的破壊」につながっていくことを防ぐために、それぞれのメンバーごとに設定されるという特徴があります。
なお、性的行動について扱う12ステップグループは、S.L.A.A.の他にもいくつかありますので、代表的なものをその特徴とともに以下に紹介しておきます。なお、紹介文は当グループのメンバー個人の見解であり、S.L.A.A.の公式見解ではありません。
(なお、S.L.A.A.はこれらの団体についての支持や推薦はしていません。以下で紹介するウェブサイトサイトは、セックスや恋愛および人間関係への依存症を扱う他の「12のステップ」と「12の伝統」に基づく依存症からの回復を目指すグループについて学ぶ機会を、個人に提供するためにのみ示されているものです。)
1:セックス・アディクツ・アノニマス(SAA/1977-)
国際サイト:https://saa-recovery.org
日本サイト:なし
セックス・アディクツ・アノニマス(SAA)は、1977年に、S.L.A.A.から分かれた避けるべき性的行動や匿名性について、より厳格に考えようとするフェローシップです。SAAは性的行為について、相対的な深刻度によって3つ(どんな状況でも決して行ってはならない行動、懸念すべき行動、健全な行動)に分ける「3サークルアプローチ」を取っています。SAAにおいても、避けるべき行動はメンバー個人が定義します。
2:セクシュアル・コンパルシブズ・アノニマス (SCA/1982-)
国際サイト:https://sca-recovery.org/
日本サイト:https://www.sca-japan.org/
セクシュアル・コンパルシブズ・アノニマス(SCA)は、他グループが異性愛者を中心としていることから、LGBTQコミュニティのメンバーのために設立されたフェローシップです。しかし、SCAは異性愛者のメンバーに対してもオープンです。
SCAも「ある性的行為が破壊的かどうかをメンバーそれぞれが決める」ことを前提に、性的行動を「ソブラエティ(破壊的行動)」「ハイリスク(再発につながる可能性)」「回復(健康的かつ持続可能)」に分けて対処していきます。
3:セクサホリック・アノニマス(SA/1979-)
国際サイト:https://www.sa.org
日本サイト:http://www.sa-japan.org/index.html
S.L.A.A.から分かれたセクサホリック・アノニマス(SA)は、問題を「セックス依存症」ではなく「渇望(Lust)」と定義しています。SAのソブラエティの定義は、他のグループと比較して非常に厳格で「法的な配偶者以外の人といかなる形のセックスもしないこと(マスターベーションも含む)」を意味しています。この「配偶者」という言葉は「男女の結婚におけるパートナー」のみを指し、同性婚を認めていません。(ただしSAは、LGBTQのメンバーを差別しているわけではなく、仲間として受け入れています。)
4:セクシュアル・リカバリー・アノニマス (SRA/1993-)
国際サイト:https://sexualrecovery.org
日本サイト:なし
SAからさらに分かれたセクシュアル・リカバリー・アノニマス (SRA)は、「異性の配偶者とのセックスしか認めない」というSAのソブラエティの定義に反対して生まれたグループです。SAのメンバーの大半が白人男性であるのに対し、SRAは女性や有色人種を歓迎する場を提供することを目指しています。
SA(やSRA)が目指すソブラエティは、「性的行動は人生の健全な一部である」と信じるSLAAやSRA、SCAにおいては「性的拒食症(アノレクシア)」として機能不全の一形態とされています。よって、この点に関しては、SAとこれらのグループとの間には考え方の違いがあると言えます。
また、SA(やSRA)がフェローシップのメンバーの「ソブラエティの定義を統一している」点も、「ある性的行為が破壊的かどうかをメンバーそれぞれが決める」SLAA、SRA、SCAとはアプローチが異なると言えます。